フェルミ推定をご存じだろうか?外資系コンサルティング会社の採用面接などでも問われる一種の概算方法である。
例えばマイクロソフトの入社問題に出題されて話題になった「マンホールのふたは何故丸い?」や「赤道直下には何人くらいの人が住んでいるか?」「全米にガソリンスタンドは何軒あるか?」など、基礎データをもとにいかに論理的にまた多面的な見方で分析し答えを導き出すことができるかが試される。
例えば、先ほどの「赤道直下の人口」では、導き出し方のひとつとして、「世界の人口」、「赤道の距離」、「赤道の幅」(解答者に任せます)、「人間の住める場所の割合」(海や山岳エリアを除くなど)」などから推定していくことができる。
新しいことを始める際にも、だいたいのマーケット規模を知るうえでもこの「フェルミ推定」は役に立つ。
傘メーカーが新製品として男性向け日傘を企画していたとしよう。
「男性向け日傘が国内で年間何本売れるか?」とフェルミ推定で計算したとしたら?
「日本人の男性人口」、「暑い夏の日昼にも関わらず外を歩いている男性」、「日焼けしたくない人の割合」などからおおおよそのマーケットを推定してみる。
一応の解答は出せるはず。
しかし一方で「そんな当てずっぽうな算数でマーケット規模を把握できるはずがない」という声も聞こえてきそうである。それは事実。ざっくりした概算しか分からない。その数字には魂がこもっていない。あくまでコンサルタント職の面接で適性を試すためのテスト、従って机上の空論である。
確かに「推定」通り「マーケット」が進むことはないように思われる。想定外のことが起こったり、思った通りに行かないのが常だ。しかし、使い方次第では、フェルミ推定は現場でも役に立つ。推定の答えが正しいかどうかが重要ではなく、考え方の筋道がいかに論理的か問われている点に注目すべき。従って、推論したことを最初は小さく始めてみて、少しずつ軌道修正しながら実体に近づけることが有効と言えよう。
「推定」に「試行」を組み合わせるということだ。
例えば、ECサイトをオープンする予算も時間もない小さな会社にとって、本格的にマーケット調査をする余裕はない。
「うーん、うーん」と腕組みしながら考えていても仕方がないので、「推定」と「試行」を繰り返しながら商品やサービスを創り上げていくしかない。コンバージョンを確認しながら、キーワードの入れ替えや単価の調整を地道に続けるリスティング広告の運用も然りである。
マーケッターはもちろんのこと、有能な経営者も意識していないだけで、「やりたい方向性」を決めたうえいくつもの「推定」と「試行」を反復しているのではないだろうか。事実、ここ数年は「仮説を立てて検証する。うまくいかなければ、仮説を修正してまた検証する。」という地道な努力が功を奏しているケースをよく目にする。
そして、最後にものを言うのは「直感」。非ロジカルな意味の直感では決してない。座学では習得できない、仮説・検証を繰り返したからこそ磨かれる能力。
つまり、「推論×試行×直感⇒実行」
正に算数のよう。
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